Gaussian 09を用いたベンゼンの構造最適化・および構造解析の計算について記述する。
まず、Gaussian 09 インプットファイル名は「C6H6.gjf」とした。 モデル化学をRHF、基底関数を6-31G(d,p)とし、構造最適化と振動解析計算を実行した。分子座標はZ-matrixで記述した。
インプットファイルは TeraPad で編集した。以下に Gaussian 09 インプットを示す。
# RHF 6-31G(d,p) opt freq
C6H6
0 1
C1
C2 1 R1
C3 2 R1 1 A1
C4 3 R1 2 -A1 1 A2
C5 4 R1 3 -A1 2 A2
C6 5 R1 4 -A1 3 A2
H7 1 R2 2 A1 3 A2
H8 2 R2 3 A1 4 A2
H9 3 R2 4 A1 5 A2
H10 4 R2 5 A1 6 A2
H11 5 R2 6 A1 1 A2
H12 6 R2 1 A1 2 A2
R1=1.399
R2=1.101
A1=120.0
A2=180.0
二面体角A2(D1としてもよい)の下は空行を2行必要とする。
これを Gaussian 09 で計算すると、以下の結果が得られた。
E(RHF) : -396.70466613 a.u.
Point Group : D6h
C-C 結合距離 : 1.38613 Å
C-H 結合距離 : 1.07571 Å
C-C-C 結合角 (1) : 119.99997 °
C-C-C 結合角 (2) : 120.00006 °
H-C-C 結合角 (1) : 119.99997 °
H-C-C 結合角 (2) : 120.00000 °
H-C-C 結合角 (3) : 120.00003 °
HCCC 二面体角 : 180.00000 °
骨格平面振動 (A1g) : 1082.6354 cm-1
CX 伸縮振動 (A1g) : 3375.4029 cm-1
CX 変角振動 (A2g) : 1500.0256 cm-1
骨格面外変角振動 (B2g) : 777.8546 cm-1
CX 面外変角振動 (B2g) : 1134.5597 cm-1
骨格平面振動 (E2g) : 664.947 cm-1
CX 伸縮振動 (E2g) : 3345.031 cm-1
骨格平面振動 (E2g) : 1794.2715 cm-1
CX 変角振動 (E2g) : 1287.3798 cm-1
CX 面外変角振動 (E1g) : 959.4325 cm-1
CX 変角振動 (A2u) : 762.0812 cm-1
骨格平面振動 (B1u) : 1095.7862 cm-1
CX 伸縮振動 (B1u) : 3333.8522 cm-1
骨格平面振動 (B2u) : 1191.0752 cm-1
CX 変角振動 (B2u) : 1348.4436 cm-1
骨格面外変角振動 (E2u) : 453.0603 cm-1
CX 面外変角振動 (E2u) : 1100.854 cm-1
CX 変角振動 (E1u) : 1645.3449 cm-1
骨格平面振動 (E1u) : 1138.4835 cm-1
CX 伸縮振動 (E1u) : 3363.4586 cm-1
ベンゼンは主回転軸 C6 に直交する2回転軸を6個もち、それに直交する対称面σh をもっているので D6h 対称性となる。
文献値*1によると、C-C 結合距離は 1.339 Å、C-H 結合距離は 1.101 Åである。
文献値*2によると、骨格平面振動 (A1g) は 992 cm-1、CX 伸縮振動 (A1g) は 3062 cm-1、CX 変角振動 (A2g) は 1326 cm-1、骨格面外変角振動 (B2g) は 703 cm-1、CX 面外変角振動 (B2g) は 995 cm-1、骨格平面振動 (E2g) は 606 cm-1、CX 伸縮振動 (E2g) は 3047 cm-1、骨格平面振動 (E2g) は 1596 cm-1、CX 変角振動 (E2g) は 1178 cm-1、CX 面外変角振動 (E1g) は 849 cm-1、CX 変角振動 (A2u) は 673 cm-1、骨格平面振動 (B1u) は 1010 cm-1、CX 伸縮振動 (B1u) は 3068 cm-1、骨格平面振動 (B2u) は 1310 cm-1、CX 変角振動 (B2u) は 1150 cm-1、骨格面外変角振動 (E2u) は 410 cm-1、CX 面外変角振動 (E2u) は 975 cm-1、CX 変角振動 (E1u) は 1038 cm-1、骨格平面振動 (E1u) は 1486 cm-1、CX 伸縮振動 (E1u) は 3063 cm-1である。
以下に、構造最適化されたベンゼンと各振動のアニメーションを図示する。
図1 構造最適化されたベンゼン
図2 ベンゼンの骨格平面振動 (A1g)のアニメーション
図3 ベンゼンのCX 伸縮振動(A1g)のアニメーション
図4 ベンゼンのCX 変角振動(A2g)のアニメーション
図5 ベンゼンの骨格面外変角振動 (B2g)のアニメーション
図6 ベンゼンのCX 面外変角振動 (B2g)のアニメーション
図7 ベンゼンの骨格平面振動 (E2g) のアニメーション
図8 ベンゼンのCX 伸縮振動 (E2g) のアニメーション
図9 ベンゼンの骨格平面振動 (E2g) のアニメーション
図10 ベンゼンのCX 変角振動 (E2g) のアニメーション
図11 ベンゼンのCX 面外変角振動 (E1g) のアニメーション
図12 ベンゼンのCX 変角振動 (A2u) のアニメーション
図13 ベンゼンの骨格平面振動 (B1u) のアニメーション
図14 ベンゼンのCX 伸縮振動 (B1u) のアニメーション
図15 ベンゼンの骨格平面振動 (B2u) のアニメーション
図16 ベンゼンのCX 変角振動 (B2u) のアニメーション
図17 ベンゼンの骨格面外変角振動 (E2u) のアニメーション
図18 ベンゼンのCX 面外変角振動 (E2u) のアニメーション
図19 ベンゼンのCX 変角振動 (E1u) のアニメーション
図20 ベンゼンの骨格平面振動 (E1u) のアニメーション
図21 ベンゼンのCX 伸縮振動 (E1u) のアニメーション
引用文献
*1 日本化学会編, 改訂4版 化学便覧 基礎編, 丸善, II-662 (1993).
*2 日本化学会編, 改訂4版 化学便覧 基礎編, 丸善, II-584-587 (1993).